はじめに
予防歯科とは、「虫歯や歯周病になる前に予防をしていく」という考え方です。
ひと昔前までは、「歯が痛くなったら歯医者に行く」という人が多かったですが、最近では予防歯科で歯科医院を受診する人が増えています。
定期的に歯科医院に行くというと、定期的に受診するための費用が余計にかかるのではないかと考える人もいますが、実際には予防歯科は将来の歯科治療費の節約になるのです。
今回は、予防歯科と将来の歯科治療費の関係について詳しく解説します。
予防歯科にかかる費用
歯科医院で受ける予防歯科には、保険診療と自由診療があります。それぞれ費用が異なるため、説明します。
保険診療の予防歯科の費用
保険診療は、病気に対して受けられる医療制度です。そのため、予防歯科で受けられる施術内容や治療の間隔などが細かく決められています。
保険では虫歯や歯周病が重症化しないことを目的とした処置をします。保険診療の場合の予防歯科受診料の目安は、3割負担で4,000円程度です。2回〜3回の通院で1セットとなります。その他、虫歯や歯周病が見つかれば、別途治療費用や通院回数が増えます。
保険診療の予防歯科の内容
保険診療では、治療を目的としているため、口腔内写真の撮影や歯ぐきの検査、必要に応じてレントゲン写真を撮影します。
クリーニングだけを希望する場合は、自由診療で受けることになります。しかし、虫歯や歯周病の早期発見にも繋がるため、予防歯科のクリーニングだけでなく、定期的な検査も受けておくことをおすすめします。
施術内容は、最初に歯や歯ぐきの検査を行い、お口の状況に合わせたブラッシング指導や歯石除去などを受けます。
保険診療の場合は「再評価」と言って、ブラッシング指導や歯石除去を受けた後の歯ぐきの状態を半月〜1ヶ月後にもう一度チェックします。
その後、機械的歯面清掃処置として、歯に付着したプラークなどの汚れを除去・研磨を行います。
多数の処置した虫歯がある方や初期虫歯がある場合には、フッ素塗布も受けることができます。また子供の場合は、シーラントと言って、奥歯の溝が深い部位に樹脂を詰めて、虫歯が発生するのを防ぐ治療を行うこともできます。
自由診療の予防歯科の費用
自由診療の場合は、内容や費用は歯科医院ごとに決められるため詳細は異なります。保険診療と違って希望の治療を希望のタイミングで受けることができます。
費用は1回あたり5,000円〜2万円で設定している歯科医院が多いです。一度に行う施術の内容によって費用が変わります。
自由診療の予防歯科の内容
自由診療で受けられる予防歯科の内容は、それぞれの歯科医院によって異なります。保険診療と違い、病気の治療を目的としていないため、歯や歯ぐき検査などをしなくても良い点が挙げられます。
P M T C(プロフェッショナル・メカニカル・ティース・クリーニング)という、歯の表面の歯垢やバイオフィルム、着色汚れを除去するクリーニングが代表的です。仕上げにフッ素塗布やトリートメントを行います。保険診療と比較して、時間をかけて細かなところまで、質の高いクリーニングを受けることができます。
予防歯科と将来の歯科治療費どちらが高いの?
予防歯科を受ける方が、圧倒的に将来の歯科治療費を抑えることができます。
予防歯科は保険診療内で受けた場合、一年間にかかる費用は、半年に一度の通院で1万円〜1万5000円ほどになります。自費診療の場合は、希望の通院回数によって異なりますが、一年間で1万円〜4万円ほどです。
では虫歯や歯周病の治療を受けることになった場合、費用はどのくらいかかるのでしょうか。代表的な治療費用を見ていきましょう。
虫歯治療でかかる費用
保険診療で行った場合の虫歯の歯科治療費用の目安位は次のようになります。
(保険診療で3割負担の場合)
・1回の治療で終わる程度の初期段階の虫歯 1,500円〜3,000円/1ヶ所あたり
・型取りをする必要がある中程度の虫歯 2,000円〜1万円/1本あたり
・神経にまで到達した虫歯 7,000円〜2万円/1本あたり
※この金額に加えて、被せ物の費用がかかります。被せ物は保険診療では、4,000円〜6,000円程度です。
・歯を保存できないほどの大きな虫歯 3,000円〜7,000円/1本あたり
※この金額に加えて、入れ歯やブリッジの費用がかかります。インプラントや自費の被せ物を希望する場合には、さらに費用がかかります。
定期的に検診を受けていない場合には、虫歯は中程度にまで進行していることが多いため、1本の虫歯だけでもかなりの金額になることがわかります。
歯周病治療でかかる費用
保険診療で行った場合の歯周病の歯科治療費用の目安は次のようになります。
(保険診療で3割負担の場合)
歯周病の治療は基本的に時間がかかります。虫歯と違って、悪いところを取って治せば終わりというわけには行きません。1回あたり3,000円程度になる場合が多いです。
・初期の歯周病の場合 4回程度の通院で5,000円〜1万円程度
・中程度歯周病の場合 6回以上の通院が必要で、1万円〜5万円程度
・重度の歯周病の場合 10回以上の通院が必要で、5万円〜50万円程度
歯周病治療には、明確なゴールがありません。歯周病が進行しない状態を維持することが目標になります。上記の費用がかかった後も、歯周病の進行を予防するために継続的に歯科医院に通う必要があります。
予防歯科で将来の医療費の削減になる?
予防歯科で虫歯や歯周病を予防していくことは、将来の歯科治療費の削減だけでなく、全身に関係する医療費の削減にもなると言われています。歯の健康は、様々な全身疾患と関わりがあります。歯を健康に保つことで、他の全身疾患の予防につながり、将来的な医療費を抑えることになります。
歯の健康に影響する全身の病気とは
歯を失うと食事が偏ったり、歯並びが悪くなったりして、栄養状態の悪化や体力の悪化に繋がります。できるだけ自分の歯を長く使うことができるように、予防歯科を取り入れるようにしましょう。
歯を失うことによる影響
・認知症のリスクが高くなる
・胃腸にかかる負担が大きくなる
・脳血管疾患の発生リスクが高くなる など
歯周病の全身への影響
歯周病により、口の中の炎症状態が続くと、炎症によって発生する毒性物質が歯肉の血管から全身にめぐり、様々な病気を引き起こしたり、悪化させたりします。歯周病を予防することは、全身の健康を守ることに繋がります。
歯周病と関わりがある全身の病気には次のものがあげられます。
・狭心症、心筋梗塞
・脳梗塞
・糖尿病
・誤嚥性肺炎
・脳梗塞 など
まとめ
予防歯科を取り入れることは、将来の歯科治療費の削減に繋がります。
「痛くなってから歯医者に行く」のではなく、痛みが出る前に虫歯や歯周病の予防をすることが大切です。
予防歯科を目的として通院することで、虫歯や歯周病が見つかった場合にも早めに対処をすることができます。早めの治療は、治療費の負担を減らし、身体の負担も減らします。
また、虫歯や歯周病の予防は、全身の健康に繋がることから将来の医療費全体の削減にも繋がると言われています。歯の健康が全身の健康に繋がることが、一昔前よりも重要視されるようになってきました。
予防歯科を取り入れて、健康寿命を伸ばしながら、医療費の節約もしていきましょう!